グーグル、効率化へのこだわり

グーグル、自社設計のサーバを初公開–データセンターに見る効率化へのこだわり

文:Stephen Shankland(CNET News.com) 翻訳校正:川村インターナショナル 2009/04/06 07:30

カリフォルニア州マウンテンビュー発–Googleは、自社のコンピューティングの運用については多くを語らない。しかしGoogleは米国時間4月1日、当地で行われた、注目度が高まっているデータセンターの効率性に関するカンファレンスで、そのインターネットの力の中枢にあるハードウェアを初めて公開した。

ほとんどの企業は、DellやHewlett-Packard(HP)、IBM、Sun Microsystemsのような企業からサーバを購入している。しかしGoogleは、何十万台ものサーバを保有していて、そのサーバを稼働させることが自社の中心的な専門技術の一部だと考えており、自社独自のサーバを設計および構築している。Googleのサーバの多くを設計したBen Jai氏は、高度な技術を持つ、非常に熱心な聴衆の目の前で、現在のGoogleサーバを公開した。

Googleサーバで非常に驚くのは、サーバ1台1台が、それぞれ12Vのバッテリを備えていて、メイン電源に問題がある場合には電力を供給することだ。Googleはまた、2005年以来、同社のデータセンターが標準規格の運送用コンテナで構成されていることを初めて明らかにした。1つのコンテナには1160台のサーバが搭載され、その電力消費は250KWに達する。

おかしく聞こえるかもしれないが、数多くの参加者(膨大な数のサーバでいっぱいのデータセンターの運用を仕事にしているような人々)は、Googleが内蔵型バッテリというアプローチを採用していることだけでなく、Googleがそれを何年間も秘密にしてきたことに驚いていた。Jai氏はインタビューで、Googleはこの設計を2005年から採用しており、現在その設計は第6世代か第7世代であると述べた。

Jai氏はこの設計について、「わが社のマンハッタン計画だった」と語っている。

Googleは、エネルギー効率に非常にこだわっており、現在では、その経験のより多くを世界と共有しようとしている。Googleの運用担当バイスプレジデントのUrs Hoelzle氏は、不況が運用予算を圧迫し、環境に対する懸念が広がり、エネルギー価格は高騰、エネルギーの制約が強まるという状況で、Googleが効率性の普及活動を拡大する機は熟したと語る。

Hoelzle氏は「人々がそれに関心がなかった状況では、説き勧めようとしても恩恵はそれほどなかった」と言うが、今では人々の意識は変化している。

初公開されたGoogleのサーバデザイン"初公開されたGoogleのサーバデザイン
提供:Stephen Shankland/CNET
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 データセンターの設計や効率の測定に携わるChris Malone氏によると、Googleは、配電や冷却、さらに暖気と冷気が混じらないようにする取り組みなど、データセンターの問題にも焦点を当てているという。Googleのデータセンターは、先端技術を使用して、米環境保護庁(EPA)が2011年までに達成可能と希望しているレベルに、既に到達している。

「われわれはこれを、いくつかのイノベーションや、ベストプラクティスを適用することによって達成した。そのなかに、市場のほかの企業に利用できないものはない」(Malone氏)

なぜ内蔵型バッテリなのか

バッテリのアプローチが重要なのはなぜか。それはコストのためだ。

通常のデータセンターは、無停電電源装置(UPS)と呼ばれる、大規模な集中型マシンに依存している。これは基本的には、メインの電源に障害が発生した際に、発電機が始動するまでに動く、巨大なバッテリだ。Jai氏は、サーバに電源を組み込んだ方が安価であり、コストがサーバの数に直接比例することになるとしている。

「これは巨大な集中型UPSよりもはるかに安価だ。そのため、容量の無駄がない」(Jai氏)

効率性は、もう1つの財政面でのファクターだ。大規模なUPSの効率は92〜95%に達することができるが、これは大量の電力が無駄になることを意味している。Jai氏は、サーバに搭載されたバッテリの方が効率性が高いと言う。「われわれの実際の使用では、効率が99.9%以上であるという測定結果が得られた」(Jai氏)

Googleサーバの高さは、3.5インチ(約8.8cm)で、データセンター用語で言えば2Uである。これには、2基のプロセッサと、2基のハードドライブ、そしてGIGABYTE製マザーボードに取り付けた8つのメモリスロットがある。Jai氏によると、Googleは、Advanced Micro Devices(AMD)製とIntel製の両方のx86プロセッサを使用しており、そのバッテリ設計をネットワーク装置にも採用しているという。

効率性が重要なのは、それを向上させると電力消費コストが抑えられるためだけでなく、一般的に効率が悪いと廃熱が生じ、冷却にさらに多くのコストが必要になるからだ。

Googleサーバ後部Googleサーバ後部
提供:Stephen Shankland/CNET

かさむコスト

Googleは、サーバを驚異的な規模で運用しており、そのコストはあっという間に大きな額となる。

Jai氏は1人で大きな負担をかかえてきた。Jai氏は2003年から2005年まで、サーバ設計を行う唯一の電気エンジニアだったと言う。同氏は、ほかにも従業員が雇用されて、その仕事を分担するようになるまで、「2年半の間、1日14時間働いた」と述べている。

Googleは、内蔵バッテリの設計に関する特許を保有しているが、Hoelzle氏は「ベンダーに喜んでそれらのライセンスを供与するつもりだ」としている。

効率性に関するGoogleのこだわりを示すもう1つの例は、電源装置の設計に表れている。電源装置では、標準的な交流の電気を直流の電気に変換する。一般的な電源装置は、コンピュータに5Vと12Vの直流電力を供給する。Googleの設計では、12Vの電力のみを供給し、必要な変換はマザーボードで行う。

これによって、マザーボードには1ドルから2ドルの追加コストが生じるが、それだけの価値はある。なぜなら、電源装置が安価になるからだけでなく、電力供給装置がピーク出力に近い状態で稼働でき、はるかに効率的に稼働することになるからだ。Googleは、銅線経由で電力を伝送するには、5Vに比べて12Vの方が、効率が良い点にも注目している。

Googleはまた、電力利用効率(Power Usage Effectiveness:PUE)と呼ばれる標準で測定した、データセンターのエネルギー効率に関する新しいパフォーマンス結果を公表した。PUEは、The Green Gridという業界団体が開発した指標で、照明や冷却などの補助的なサービスと比較して、コンピューティングで直接消費される電力がどれくらいかを示すものだ。満点の1.0は、余分なコストのために消費されている電力がまったくないことを意味する。1.5は、コンピューティング用電力の半分が補助的なサービスで消費されているということだ。

効率化されるGoogleデータセンター効率化されるGoogleデータセンター
提供:Stephen Shankland/CNET

GoogleのPUEのスコアは素晴らしく低いが、Googleはこのスコアをさらに低くするために取り組んでいる。Malone氏によれば、GoogleのPUEは、2008年の第3四半期には1.21であったが、2008年第4四半期には1.20、2009年第1四半期(3月15日まで)には1.19へと減少した。

Googleの古い設備は一般的にPUEが高いとMalone氏は述べている。最も優れた設備は、1.12のスコアを記録している。Googleは、温暖な気候になると、サーバを低い温度に保つのが難しくなることに注目している。

 Googleのデータセンターコンテナに関するビデオの一場面Googleのデータセンターコンテナに関するビデオの一場面
提供:Stephen Shankland/CNET

運送用コンテナ

多くの人は一度に1台のコンピュータを購入するが、Googleの考えるスケールはかなり違っている。Jimmy Clidaras氏は、Googleのデータセンターの中枢は、標準の1AAA運送用コンテナで構成され、コンテナ1台に1160台のサーバが搭載されており、各データセンターに多数のコンテナがあることを明かした。

モジュール式データセンターはGoogle独自のものではない。Sun MicrosystemsとRackable Systemsはともに、そうしたタイプのものを販売している。しかし、Googleがモジュール式データセンターを導入したのは2005年だ。

そういっても、Googleの最初の試みはいくつかの困難をくぐり抜けてきたと、Clidaras氏は言う。例えば、最初に使ったクレーンが、実際にはコンテナ1つを持ち上げるのにも十分な大きさでないことに気づいたときなどだ。

全体的に見て、Googleの選択は、ソフトウェア、ハードウェアそして設備を含む、幅広いコスト分析によって決定されてきた。

「初期は、(検索)クエリ当たりのコストを重視していた。われわれは重視せざるを得なかった。クエリ当たりの売り上げは非常に小さい」(Hoelzle氏)

Hoelzle氏は、x86プロセッサを搭載したメインストリームサーバが唯一の選択肢だったと付け加えた。「10年前、(検索を)無料の製品として機能させるには、比較的安価なハードウェアで運用するしかなかった。それをメインフレーム上で動かすことはできない。採算が十分に取れないのだ」(Hoelzle氏)

Googleの規模での運用には、困難もあるが、明るい面もある。例えば、一定額の研究投資を、より多くのインフラストラクチャに対して適用でき、利益をより早く上げることができると、Hoelzle氏は述べている。

 Googleのモジュール式データセンターGoogleのモジュール式データセンター
提供:Stephen Shankland/CNET

 

この記事は海外CNET Networks発のニュースをシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです