カテゴリー別アーカイブ: 電気料

東京電力の電気料金メニュー/おトクなナイト8・10

以下は、東京電力の電気料金メニューのおトクなナイト8・10(時間帯別電灯【夜間8時間型】/時間帯別電灯【夜間10時間型】)の情報。電気料金を勉強するために、ここへそのまま引用した。


http://www.tepco.co.jp/e-rates/individual/menu/home/home03-j.html

夜がトクいな方のために、「おトクなナイト8・10」

夜型のライフスタイルのお客さまや、夜間蓄熱式機器をご使用のお客さまにおすすめのメニューです。電気の使い方の工夫により、夜間の電気ご使用量の割合を高くしていただくほど電気料金の低減の可能性があります。

  • ※夜間蓄熱式機器をご使用でないお客さまにもご利用いただけます。
  • ※負荷設備の使用時間を昼間時間から夜間時間に変更することができない街路灯、看板灯、集合住宅の共用灯などの需要については適用対象外とさせていただいております。

「8」と「10」、ライフスタイルにあわせてお選びください

電力量料金単価の割安な夜間時間を、「おトクなナイト8」では8時間、「おトクなナイト10」では10時間に設定しています。お客さまのライフスタイルなど電気のご使用状況にあわせ、より適したメニューをお選びいただけます。

おトクなナイト8

夜間時間 毎日午後11時から翌朝の午前7時まで
昼間時間 毎日午前7時から午後11時まで

おトクなナイト10

夜間時間 毎日午後10時から翌朝の午前8時まで
昼間時間 毎日午前8時から午後10時まで

※グラフの金額は、1kWhあたりの電力量料金単価(税込)です。なお、昼間時間の電力量料金単価(税込)は第2段階料金です。具体的な適用単価は、下記の料金表をご参照ください。

メリットを活かすには

「おトクなナイト8」、「おトクなナイト10」では、電力量料金単価を昼間時間と夜間時間の2つの時間帯に分けて設定しています。電気のご使用時間帯を昼間時間から夜間時間に、上手にシフトしてお使いいただくなどの工夫で、電気料金の低減の可能性があります。

おトクなナイト8でメリットを活かすご利用イメージ

おトクなナイト8でメリットを活かすご利用イメージ

モデルケースのご紹介(おトクなナイト8の場合)

現在のご契約種別から「おトクなナイト8」に変更した場合の電気料金比較を、パターン別にご紹介します。以下のモデルケースについては、平成24年9月1日実施の電気料金単価で試算しております。

パターン1「電気の使い方の工夫により、比較的多くの電気をピーク時間から昼間時間、または昼間時間から夜間時間にシフトしてご利用いただけるお客さま(従量電灯Bをご契約)」

以下のケースでは、電気の使い方を工夫していただければ、おトクなナイト8の方が割安になる場合があります。

年間電気料金の比較イメージ

年間のご使用量内訳

年間のご使用量内訳

  • ※燃料費調整額は平成24年9月分を、太陽光発電促進付加金および再生可能エネルギー発電促進賦課金は平成24年度分を前提として試算いたしました。
  • ※口座振替割引額は考慮しない等、概算として算定しておりますので、実際のご請求金額と異なります。

パターン2「平均的な使用量で電気をご利用いただいているお客さま(従量電灯Bをご契約)」

以下のケースでは、引き続き従量電灯Bでのご契約をおすすめします。

年間電気料金の比較イメージ

年間のご使用量内訳

  • 「従量電灯B」では、ひと月の電気ご使用量に応じて3段階の電力量料金単価を設定しております。最初の120kWhまでの第1段階料金は比較的低い料金、120kWhをこえて300kWhまでの第2段階料金は平均的な料金、300kWhをこえた第3段階料金はやや割高な料金となっております。したがって、月々の電力量料金として主に第1段階料金および第2段階料金が適用されているお客さまの場合、引き続き「従量電灯B」でのご契約をおすすめします。
  • ※燃料費調整額は平成24年9月分を、太陽光発電促進付加金および再生可能エネルギー発電促進賦課金は平成24年度分を前提として試算いたしました。
  • ※口座振替割引額は考慮しない等、概算として算定しておりますので、実際のご請求金額と異なります。
  • ※パターン1でご案内している「節電手法」では、おトクなナイト8に契約変更しても電気料金は割安になりません。
  • ※おトクなナイト8の昼間時間も3段階の電力量料金単価を設定しておりますが、「従量電灯B」と比べて高い水準になっています。

パターン3「現在のご契約種別が電化上手(季節別時間帯別電灯)のお客さま」

以下のケースでは、引き続き電化上手でのご契約をおすすめします。

年間電気料金の比較イメージ

年間のご使用量内訳

  • エコキュートや電気温水器などの夜間蓄熱式機器等をご使用のお客さまには,電気料金が割安になる「電化上手」でのご契約をおすすめいたします。
  • ※燃料費調整額は平成24年9月分を、太陽光発電促進付加金および再生可能エネルギー発電促進賦課金は平成24年度分を前提として試算いたしました。
  • ※口座振替割引額は考慮しない等、概算として算定しておりますので、実際のご請求金額と異なります。

おトクなナイト8・10の料金について

平成24年8月31日までの料金表はこちら

おトクなナイト8

単位 料金(税込)
基本料金 契約容量 6kVA以下の場合 1契約 1,260円00銭
7kVA~10kVAの場合 2,100円00銭
11kVA以上の場合 2,100円00銭 + 273円00銭 ×(契約容量 -10kVA)
電力量料金 昼間時間 最初の90kWhまで(第1段階料金) 1kWh 23円15銭
90kWhをこえ230kWhまで(第2段階料金) 30円87銭
上記超過(第3段階料金) 35円66銭
夜間時間 11円82銭
割引額 5時間通電機器をご使用の場合は、機器の総容量1kVA につき241円50銭割引
通電制御型夜間蓄熱式機器をご使用の場合は、機器の総容量1kVA につ147円00銭割引
最低月額料金 1契約 314円75銭
  • ※電力量料金は、燃料価格の変動に応じて燃料費調整額を加算あるいは差し引きます。
  • ※電気料金を算定する際は、「再生可能エネルギー発電促進賦課金」および「太陽光発電促進付加金」を加算します。
  • ●5時間通電機器割引については、平成25年3月31日をもちまして、新規加入の申込受付を終了いたします。

おトクなナイト10

単位 料金(税込)
基本料金 契約容量 6kVA以下の場合 1契約 1,260円00銭
7kVA~10kVAの場合 2,100円00銭
11kVA以上の場合 2,100円00銭 + 273円00銭 ×(契約容量 -10kVA)
電力量料金 昼間時間 最初の80kWhまで(第1段階料金) 1kWh 25円20銭
80kWhをこえ200kWhまで(第2段階料金) 33円60銭
上記超過(第3段階料金) 38円81銭
夜間時間 12円06銭
割引額 8時間通電機器をご使用の場合は、機器の総容量1kVAにつき42円00銭割引
5時間通電機器をご使用の場合は、機器の総容量1kVAにつき283円50銭割引
通電制御型夜間蓄熱式機器をご使用の場合は、機器の総容量1kVA につき189円00銭割引
最低月額料金 1契約 314円75銭
  • ※電力量料金は、燃料価格の変動に応じて燃料費調整額を加算あるいは差し引きます。
  • ※まったく電気をご使用にならない場合の基本料金は、半額となります。
  • ※電気料金を算定する際は、「再生可能エネルギー発電促進賦課金」および「太陽光発電促進付加金」を加算します。
  • ※最低月額料金の適用を受けるお客さまの電気料金は、最低月額料金に再生可能エネルギー発電促進賦課金および太陽光発電促進付加金を加えたものとなります。
  • ●5時間通電機器割引については、平成25年3月31日をもちまして、新規加入の申込受付を終了いたします。

「おトクなナイト8・10」へのご契約変更について

「おトクなナイト8・10」へのご契約変更のお申し込みは当社カスタマーセンターにてお受けしています。無料コンサルトも行っておりますので、お気軽にご相談ください。

東京電力/電気料金メニュー

東京電力の電気料金を勉強するため、料金メニューをそのままここに引用した。
http://www.tepco.co.jp/e-rates/individual/menu/home/index-j.html


一般のご家庭・商店などのお客さま

・従量電灯
使用する時間帯に関係なく、いつ使っても料金は一定です。ご家庭で広くご利用いただけるスタンダードなメニューです。

・おトクなナイト8・10(時間帯別電灯【夜間8時間型】/時間帯別電灯【夜間10時間型】)
電気の使い方の工夫により、夜間のご使用割合を高めていただくほど電気料金の低減の可能性があるメニューです。

・ピークシフトプラン(ピーク抑制型季節別時間帯別電灯)
夏の電気ご使用のピーク時(午後1時~4時)や昼間にお使いいただく電気を上手にシフトしていただくことで電気料金の低減の可能性があるメニューです。

・電化上手(季節別時間帯別電灯)
エコキュートや電気温水器などの夜間蓄熱式機器等をご使用で、キッチンも電気という方におすすめのメニューです。

・深夜電力
電気温水器などの夜間蓄熱式機器をご使用になる場合のメニューです。電力消費の少ない深夜から朝にかけての電気を使用するため、料金が割安になります。

・スマイル・クッキング割引(電化厨房住宅契約)
IHクッキングヒーターのご使用で電気料金が割引になるメニューです。

電力を安く使うための基礎知識(7)

電力会社を使わなければ、電気料金は下げられる
http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1206/11/news039.html
東京電力や関西電力が電気料金を値上げしたことに対抗して、電力会社を使わないでコストを削減する試みが企業や地方自治体の間で広がってきた。電気料金の安い「新電力」と呼ばれる電気事業者へ契約を切り替えるなど、選択肢はいくつかある。
[石田雅也,スマートジャパン]

神奈川県の横須賀市が6月で東京電力との契約を打ち切り、「新電力」のエネットからの供給に切り替えたことは、地方自治体として画期的な試みと言えるだろう。これによって横須賀市は市内の学校72か所で使う電力のコストを、年間で2000万円以上も削減できると見込んでいる。

「電気は電力会社から買う」という常識が崩れ始めた。これまで知られていなかった電力会社のコスト構造が明らかになり、いまや電気料金が割高に設定されていることは周知の事実になった。これを好機と見て、電力の自由化によって電気事業に参入した「新電力」が割安の電気料金を提示して、電力会社からの移行を促進している(図1)。

ALT図1 電力の自由化による競争の構図。出典:経済産業省

現時点で電力の販売が自由化されているのは「高圧」と呼ばれる主に企業が利用する契約に限られているが、政府は家庭や商店向けの「低圧」についても自由化を進める方針だ。太陽光発電やガスコージェネレーションの拡大によって一般の企業や家庭でも電力を作り出せるようになり、電力の売買ネットワークが一気に広がり始めている。電力会社以外から安く電力を購入する方法が現実味を帯びてきた。

「新電力」は基本料金が安くなる

電力会社以外から電力の供給を受ける場合の形態は2通りが考えられる。使用する電力の全量を新電力などからの購入に切り替える方法のほかに、従来の電力会社との契約を残したまま複数の供給元を併用する方法もある(図2)。後者の場合にはコスト削減効果は小さくなるものの、電力を安定して使える利点がある。

複数の供給元を併用することによって災害や事故の影響を小さくでき、リスク分散の点では有利だ。ただし学校のように夏の電力使用量が少ない施設であれば、停電時のバックアップ体制を整えておくことで、新電力からの供給ルートだけでも問題が生じる可能性は小さいだろう。

ALT図2 新規事業者を加えた電力供給ルート。出典:エネット

新電力でも発電に使う設備や燃料のコストは、基本的に電力会社と変わらない。同程度の原価がかかっても、内部のコストを抑えることによって、電気料金を安くすることができる。新電力の中で販売量が最も多いエネットの場合、燃料費に相当する部分は電力会社と同じレベルに設定して、基本料金や従量料金の単価を割安に提案する(図3)。

ALT図3 「新電力」の電気料金イメージ。出典:エネット

エネットが横須賀市と契約した内容を見ると、従量料金は東京電力と同額のままで、基本料金を約18%安くしている。原価が影響しない基本料金を大幅に下げた設定である。一般企業に対しても、このように基本料金の引き下げを提示するケースが多いとみられる。

契約電力が小さい場合は移行までに3か月

電力会社から新電力へ契約を切り替えることになった場合、どのような手続きが必要になるのだろうか。最も多くのケースが想定される東京電力からエネットへ切り替える例を見てみよう。

まず現在の電力会社と結んでいる契約の種類によって違いがある(図4)。契約電力が大きい「高圧大口」(500kW以上)の場合は、電力会社との契約内容が協議によって決められるので、契約変更の手続きは割と簡単だ。原則として電力会社に解約届を出せば済む。このため移行までの手続きは1か月程度で完了する。

これに対して契約電力が小さい「高圧小口」(50kW以上500kW未満)では、基本料金が直近の12か月間の最大使用量によって決まる「実量制」になっているため、電力メーターの確認作業などが必要になり、それだけプロセスが多くなる。実際に新電力から供給を受けられるようになるまで3か月程度の期間がかかるようだ。その手間に見合うだけのメリットを得られるように料金の交渉を進めたいところである。

ALT図4 「新電力」を利用する際の契約プロセスの例(東京電力からエネットへ切り替える場合)。出典:エネット

毎日の電力を入札方式で売買できる取引所

新電力のほかにも、安く電力を購入する方法がある。毎日の電力を入札方式によって売買できる「日本卸電力取引所」だ。この取引所は沖縄電力を除く9つの電力会社のほか、エネットなどの新電力を含む合計21社が基金を出して2003年に設立した。電力を30分単位で売買でき、取引の情報はウェブサイトに掲載される(図5)。

ALT図5 日本卸電力取引所のウェブサイトに掲載される電力売買状況。(スポット取引の場合の1kWhあたりの単価と電力量)。出典:日本卸電力取引所

取引できる会員になるためには条件がある。取引所の最低売買単位が1000kWhに設定されていることから、売り手としての発電能力あるいは買い手としての電力需要のどちらかが1000kW以上であることが必要条件になる。さらに加入時に100万円の保証金のほか、毎年60万円の会費を納めなくてはならない。相当な量の電力を売買できる事業者に限定されるのが現状だ。

この取引所の中に2012年6月18日から、太陽光やガスコージェネレーションなどで発電した電力を少量でも売買できる「分散型・グリーン売買市場」が設けられることになった。この新しい市場では保証金や会費は不要である。

ただし太陽光による電力は2012年7月1日から始まる再生可能エネルギーの「固定価格買取制度」によって、1kWhあたり42円という通常の電気料金の2倍程度の単価で電力会社が買い取ることになっている。

取引所の新市場で売買される電力も同程度の単価になることが予想されるため、一般企業が電力を安く買う目的で利用するには向かないと考えられる。むしろ自家発電で余った電力を電気事業者に高く売るための市場と考えたほうがよさそうだ。高く売れた分だけ、全体の電力コストを削減することにつながる。

電力を安く使うための基礎知識(6)

導入企業が増えるガスコージェネ、電気と熱の両方を効率よく供給
http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1205/29/news069.html
家庭向けの「エネファーム」で注目を集めているガスコージェネレーションシステムは、都市ガスやプロパンガスから電気と熱の両方を作り出せるためにエネルギー効率が高く、通常の電力と比べてコストが割安になる。特に熱を多く使う企業が導入すると効果的だ。
[石田雅也,スマートジャパン]

ガスと聞くと、従来はガスコンロやストーブ、給湯機などに使われるイメージが強かったが、最近は企業の発電用でも普及してきた。ガスを使って電気と熱の両方を作り出せることから「ガスコージェネレーションシステム」(略称「ガスコージェネ」)と呼ばれている。

調査会社の矢野経済研究所によると、東日本大震災の後に発電システムとしての需要が高まり、2011年度は企業向けのガスコージェネの出荷金額が前年度から2倍以上に増加した。今後も年率40%以上のペースで市場規模が拡大していくと予測されている。

ALT図1 ガスコージェネレーションシステムと火力発電のエネルギー効率。出典:日本ガス協会

ガスコージェネが注目を集める要因は主に2つある。1つは電気と熱の両方を利用者の近くで作ることができるため、同じガスを使う火力発電と比べて、効率的にエネルギーを生み出せる点だ(図1)。発電の時に出る熱を再利用して冷暖房や給湯に使うことができる。およそ2倍の効率でエネルギーが利用者に届き、それに伴ってエネルギーの利用コストが安くなる。

かりに電力会社とガス会社が同様のコスト計算で電気料金とガス料金を設定していれば、ガスコージェネは利用者から見ると通常の電力と比べて約半分のコストで済む計算だ。その差額によってガスコージェネシステムの導入費を回収し、それ以降のコスト削減につなげることができる。

もう1つのメリットは災害や電力不足によって停電が発生しても、電力を供給し続けられることである。これまでガスコージェネはポンプなどの動力用に電力会社からの電力供給がないと動作しない製品が多かったが、最近は自立型の製品が増えて、停電時でも動作モードを切り替えて電力と熱を供給できるようになってきた。企業にとってはBCP(事業継続計画)の点でも効果を期待できる。

現在のガスコージェネシステムは発電の仕組みによって3種類に分けられる(図2)。発電容量の大きい順に「ガスタービン」「ガスエンジン」「燃料電池」の3方式である。このうち家庭向けで普及している「エネファーム」は燃料電池を使ったものだ。タービンやエンジンを使わないので騒音が小さいという利点がある。

ALT図2 ガスコージェネレーションシステムの種類。出典:日本ガス協会

企業向けの小型システムで400万円程度

ガスコージェネは太陽光発電システムと同様に、発電能力が10kW以上の製品が企業向け、10kW以下が主に家庭や店舗向けである。ガス会社のほかに電機メーカーや自動車メーカーなどが企業向けと家庭向けの両方を販売している。

企業向けの小型システムが10kWタイプで400万円程度、家庭用のエネファームで0.7kWタイプの普及型が給湯と暖房の機能が付いて250万円程度である。

ALT図3 ガスコージェネレーションシステムの導入施設。電力と熱の必要量によって導入するシステムが分かれる。出典:日本ガス協会

ガスコージェネ製品を検討するにあたって重要なことの一つは、電力を重視するか、給湯や冷暖房など熱の供給を重視するかである。導入する施設によって電力と熱の必要量のバランスが違うため、製品も電力供給に重点を置いたタイプと熱の供給に重点を置いたタイプに分かれている(図3)。電力と熱の必要量に見合った製品を導入すれば、十分な費用対効果を得ることができる。

ALT図4 企業向けの小型ガスコージェネレーションシステム(寸法はミリメートル)。出典:東京ガス

企業向けの小型システムで標準的な製品を例にとると、発電能力が10kWタイプのもので、熱の供給量を加算すると約27kW相当のエネルギーを作り出すことができる(図4)。ガスからのエネルギー効率は電力が30%、熱が50%で、利用可能なエネルギーは合計して80%になる仕組みだ。火力発電の場合の40%と比べて、エネルギーの変換効率は2倍になる。

このガスコージェネシステムを毎日12時間稼働させた場合、年間の電力使用量に換算すると約12万kWhに相当する。企業向けの電気料金の平均的な単価15円/kWhを掛け合わせると年間で約180万円になる。エネルギー効率を2倍とすれば、ガス料金が2分の1の約90万円で済むことになり、年間で約90万円のコスト削減につながる計算だ。

5年程度で初期導入費を回収できる

初期導入費はシステムの価格400万円に工事費が加わる。これに対して毎年90万円のコストを削減できれば、5~6年程度で回収できる。平日だけ稼働させた場合は1.5倍の期間が必要になる。ガスコージェネの寿命は標準で10年~15年と言われており、それでもコスト回収は十分に可能だろう。特に休日がなくて営業時間が長いホテルや病院、ファストフード店やコンビニエンスストアなどに導入すれば効果的である。

経済産業省の補助金制度も企業向けと家庭向けの両方で用意されている。企業向けは発電能力が10kW以上の製品を導入した場合に、一般企業であれば工事費を含む導入費用の3分の1まで、地方自治体などは2分の1まで補助金を受けることができる。申請の締め切りは2012年6月15日である。

家庭向けにはエネファームの補助金が2013年1月末まで申請を受け付けている。1台あたり70万円までの補助金を受けることができる。電気料金の値上げが相次ぐ中、うまく補助金を活用して低コストでガスコージェネを導入する好機と言える。

電力を安く使うための基礎知識(5)

昼間の電力ピークカットには太陽光発電、価格低下で普及が加速
http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1205/23/news069.html
国内で太陽光発電システムを導入する動きが加速している。市場拡大に伴って価格が下がり、2011年度には出荷量が前年比で3割以上も増えた。昼間に使う電力を太陽光発電でカバーすれば、ピークカットとコスト削減を両立させることができる。
[石田雅也,スマートジャパン]

夏に向けて電力会社の料金値上げが相次いでいる。電気料金を抑えるうえで、昼間の電力使用量を大幅に減らすことが重要になってきた。その最善策として太陽光発電システムを導入する企業や家庭が増えている(図1)。

最近の3年ほどで太陽光発電システムの価格は2割くらい下がった。さらに補助金制度が国だけではなく全国の地方自治体でも始まり、導入費用を回収しやすくなったことが追い風になっている。太陽光発電による余剰電力の買取価格も高めに設定されており、将来に向けて導入メリットがますます大きくなってきた。

ALT図1 太陽電池の国内出荷量(2011年度から用途の区分を変更)。出典:太陽光発電協会

価格は1kWhあたり50万円前後まで低下

太陽光発電システムは蓄電システムと同じように、企業向けと家庭向けで製品が分かれている。家庭向けは発電能力(最大出力)が10kW未満、企業向けは10kW以上が一般的である。価格は3年前の2009年に1kWあたり70万円程度だったものが、現在は50万円前後まで下がっている。

蓄電システムで課題になっている製品の寿命に関しても、現状では10年~20年と相対的に長い。太陽光発電システムの主な構成要素は、太陽光を電気に変換する「太陽電池」のほかに、太陽電池が作り出す直流の電気をさまざまな機器で使えるように交流に変換する「パワーコンディショナ」の2つである(図2)。

このうち太陽電池の寿命は20年~30年と長く、一方のパワーコンディショナは半分の10年~15年程度と想定されている。平均すると太陽光発電システムの寿命は15年と考えるのが妥当だろう。

ALT図2 太陽光発電システムの標準的な構成要素。出典:太陽光発電協会

以上のような価格と寿命をもとに、太陽光発電システムの年間コストを大まかに計算することができる。10kWの発電能力があるシステムの価格は約500万円で、工事費を1割プラスして、寿命を15年とすると、年間で約37万円のコスト負担になる。

一般の家庭の場合には現在のところ4kWタイプが標準的で、1年あたり15万円程度で費用を見込んでおく必要がある。ただし補助金を使えば、もう少し安くなる。国が運営する制度では、1kWあたり3万~3万5000円の補助金が支給される。

「固定価格買取制度」で費用対効果が改善

では太陽光発電システムが作り出す電力の量はどのくらいになるのか。当然ながら気象条件や地域によって変わってくるが、参考値としてパナソニックが試算したデータを使うことにする(図3)。これを見ると、10kWの発電能力があるシステムの場合で、およそ1万2000~1万4000kWhの電力を1年間に作り出すことができる。

ALT図3 日本の主要都市において太陽光発電システム(最大出力10kW)が年間に作り出す電力量の予測値。出典:パナソニック

この電力量をもとに、年間の電気料金を計算すれば、費用対効果が分かる。企業向けの電気料金の単価は、1kWhあたり15円程度である。年間で1万3000kWhの電力を太陽光発電システムでカバーできると、約20万円分の電力に相当する。これだと先ほど計算した年間のコスト負担額(約37万円)の半分程度にとどまる。

ただし太陽光発電システムによる電力の全量を自社で使わなければ、余った分を電力会社に売ることによって、ある程度のコストを回収することができる。太陽光発電で作り出された電力は、2009年11月から始まった「太陽光発電の余剰電力買取制度」により、経済産業省が決めた価格で電力会社が買い取ることになっている。直近の2012年4月~6月の価格は1kWhあたり40円か42円で、通常の企業向け電気料金の2倍以上に設定されている(図4)。

ALT図4 太陽光発電の買取価格(2012年4月~6月)。太陽光以外の自家発電設備を併用した場合には「ダブル発電」の価格を適用。出典:経済産業省

電気料金が高い家庭では大きなメリット

さらに2012年7月からは「再生可能エネルギー固定価格買取制度」が始まることになっており、太陽光発電の電力は1kWhにつき42円で買取価格が固定される。かりに10kWの発電能力がある太陽光発電システムからの電力をすべて売った場合には、年間で約55万円の収入になり、コスト負担額の37万円を大きく上回る。およそ半分の電力を自社で使用して、残った半分を電力会社に売ると、ほぼトントンの状態になる。42円という固定価格は、絶妙な設定と言える。

一方、家庭の場合は電気料金の単価が1kWhあたり25円程度で、企業向けよりも高い。太陽光発電による電力をすべて使い切っても、ちょうど年間のコスト負担額(約15万円)と見合う。さらに東京電力や関西電力が時間帯別の料金プランを家庭向けにも開始する。

そうなると蓄電システムを導入して、昼間の太陽光発電による電力を長時間にわたって家庭内で利用できれば、単価の安い夜間だけ電力会社から購入することで、電気料金を大幅に引き下げることが可能になる。現状では企業よりも家庭のほうが、太陽光発電の費用対効果の点で有利だ。

最近は太陽光発電のほかにも、電気と熱の両方を効率よく作り出せる「ガスコージェネレーションシステム」が家庭や店舗を中心に広がってきた。本連載の次回で解説する。

電力を安く使うための基礎知識(4)

蓄電池に夜間の安い電力を、今なら補助金も使える
http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1205/15/news065.html
東京電力が夏のピークシフトを目的に、時間帯別の料金制度を店舗や家庭向けのサービスにも拡大する。夜間の安い電力を昼間に効率よく使うためには、蓄電システムが欠かせない。ただし価格の高さと寿命の短さが大きな課題として残る。
[石田雅也,スマートジャパン]

 

電力会社は昼間の電力需要のピークを下げるために、昼間の電気料金を高くする代わりに夜間を格段に安くした「時間帯別料金プラン」を、企業向けと家庭向けの双方で増やしている。利用者側は昼間の電力使用量を減らして、その分を夜間に回すことによって、毎月の電気料金を引き下げることができる。

そこで夜間の電気を貯めて昼間に使える蓄電システムに大きな注目が集まってきた。住宅メーカー各社から発売が相次いでいるスマートハウスにも標準的に蓄電システムが組み込まれている。

電気料金の削減とピークカットを実現

蓄電システムを使った夜間電力の活用方法は単純明快だ。電気料金が安くなる夜の時間帯に電力の一部を蓄電システムに貯めておき、電気料金が高くなる昼の時間帯に入ったら蓄電システムに貯めた電力を優先的に使うようにする(図1)。システムを切り替える時間は電力会社の料金メニューや電力使用量がピークになる時間帯に合わせてタイマーで設定する。

ALT図1 蓄電システムによる夜と昼の電力供給の流れ。出典:パナソニック

たとえ昼間に使う電力の量が従来と同じであっても、蓄電システムによる電力の分だけ、電力会社から供給を受ける量を減らすことができる。電力使用量の「ピークカット」ができるわけで、昼夜の電気料金の差額に加えて、ピークの抑制による基本料金の引き下げにもつながる“一石二鳥”の効果がある。

さらに電力使用量を監視・制御できるBEMS(ビル向けエネルギー管理システム)やHEMS(家庭向けエネルギー管理システム)と組み合わせれば、蓄電システムからの供給電力量に合わせて照明や空調をコントロールしたり、太陽光発電からの供給電力とバランスをとったりすることも可能になり、電力会社から購入する量を最小限に抑えることができる(図2)。現時点で最も進んだ節電対策と言える。

ALT図2 蓄電システムと太陽光発電を組み合わせることにより、昼間に電力会社から購入する電力量を抑制。出典:パナソニック

実際にオフィスや家庭に蓄電システムを設置する方法も小型の製品であれば難しくない。通常の100Vで使う場合には、蓄電システムの電源プラグをコンセントにつないで、あとは電気機器の電源プラグを蓄電システムに接続するだけである(図3)。ただし小型の蓄電システムだと供給できる電力の制限によって、消費電力が大きいエアコンなどは接続できないことに注意する必要がある。

ALT図3 小型蓄電システムの接続例。出典:ソニー

小型の蓄電システムで価格は100万円台

現在市販されている蓄電システムは大型と小型の2種類に分けることができる。蓄電システムに貯められる電力の容量によって、10kWh以上を大型、10kWh未満を小型に分類する。kWhは「キロワット×時」を表す単位で、1キロワットの電力を1時間使った場合の電力使用量が1kWhになる。電気料金の単価も同様にkWhで決められている。

小規模な店舗や家庭で使うには小型の蓄電システムで十分で、現在は1kWh~3kWh程度の製品が主流である。例えば一般の家庭では平均して500W(0.5kW)程度の電力が使われているため、単純に計算すると容量が1kWhの蓄電システムで2時間分の電力を供給できることになる。ただし100%の電力を使い切らずに、7割程度までに抑えて利用するのが一般的だ。

小型の蓄電システムの価格は現在のところ、容量が1kWh~3kWhの製品で100万~200万円の範囲にある。政府の補助金を受けられるリチウムイオン電池を搭載した製品が現在7つあり、導入費用の3分の1を補助金でカバーできる(図4)。

ALT図4 政府の補助金制度の対象になる小型の蓄電システム。2012年5月14日現在

一方、容量が10kWhを超える大型の蓄電システムは、工場や中規模以上の店舗などで、消費電力の大きい機器と接続する用途に向いている(図5)。業務用のエアコンや冷蔵庫などに電力を供給することも可能だ。その代わり価格は小型と比べてかなり高い。例えばパナソニックからリチウムイオン電池を組み込んだ容量15kWhの製品が発売されているが、1台で770万円と小型の5倍程度になる。

ALT図5 大型蓄電システムの接続例。出典:パナソニック

大型の蓄電システムに対しても今後は政府の補助金を適用できるようになる。小型の場合と同様に工事費を含めた導入費用の3分の1が補助され、企業が導入する場合には上限が1億円と高額である。接続する機器の電力使用量の合計値をもとに、必要な容量と導入台数を決めて、最大限に補助金を利用することが望ましい。

リチウムイオン電池の寿命は5年~10年程度

蓄電システムの導入にあたって注意すべきことの一つに、内蔵する電池の寿命がある。充電と放電を繰り返すことで電池の性能が劣化するためだ。仕様通りの性能を発揮できる期間は利用状況によるが、リチウムイオン電池の場合で5年~10年と言われている。100万円で導入した蓄電システムのコストは、安全を見て寿命を5年と考えると、1年あたり20万円にもなる。

このコストを昼夜の電気料金の差額分で吸収できれば、停電時にも電力を確保できることと考え合わせて、導入メリットは十分にある。しかし年間で20万円の電気料金を削減するというのは、少なくとも一般家庭では非現実的な話である。

実際に現在の電気料金の単価をもとに、蓄電システムの費用対効果を計算してみる。電力の使用量が変わらない前提で、昼夜の電気料金の差額だけを想定する。電力会社が設定している時間帯別の単価を比べると、昼間と夜間の差は家庭向けで1kWhあたり20円~25円程度、企業向けでは5円~10円程度である。

一般の家庭で小型の蓄電システムを使って毎日1kWhの電力を昼から夜にシフトしても、1日あたり20円~25円、年間で1万円も削減できないことになる。100万円かけて蓄電システムを導入するとコストを回収できないことは明らかだ。

企業においても状況はさほど変わらない。大型の蓄電システムで毎日10kWhの電力を昼から夜に振り替えても、1日あたりの電気代は50円~100円程度しか削減できない。年間でも4万円に満たない額である。さらにピークカットによって基本料金の削減も期待できるが、その効果を加えても年間で10万~20万円程度の電気料金を減らすのが精いっぱいの範囲だ。数100万円にのぼる蓄電システムの導入コストを短期間のうちに回収することは難しい。

これから蓄電システムの価格が数分の1に下がり、寿命がさらに延びていかないと、費用対効果の点では得な策とは言いがたい。

とはいえ蓄電システムを導入することで無理なくピークカットを実現できる点は、電力が足りない社会情勢から考えて重要な対策になる。特に昼間に多くの電力を使う店舗や工場の節電対策としては十分な役割を果たす。太陽光発電システムと組み合わせれば、昼間に余った電力を蓄電システムに貯めて、夜間や悪天候時に利用することも可能になる。

当面は電力を安く使う目的よりも、限りある資源や電力を有効に活用するためのシステムと考えて導入するのが正しいだろう。

 

電力を安く使うための基礎知識(3)

節電対策の主役に急浮上、BEMSの費用対効果を検証
http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1205/07/news030.html
電力需要が増加する夏を前に、多くの企業で節電対策が急ピッチに進んでいる。毎日の電力使用量をきめ細かく管理しながら抑制するためには、コンピュータを使ったBEMS(ビル向けエネルギー管理システム)が最も有効な手段になる。
[石田雅也,スマートジャパン]

本連載の第2回では、企業の電気料金を引き下げるうえで電力使用量の最大値(ピーク)を抑えることが重要なこと、そしてピークを制御する装置として「デマンドコントローラ」の導入が効果的であることを説明した。さらに節電対策を徹底するために、ピークの抑制だけではなく毎日の電力使用量を継続して削減する目的で、BEMS(ビル向けエネルギー管理システム)を導入する企業が増えている。実際にはBEMSの中にデマンドコントローラを組み込んで使うケースが多く、ピークの抑制と電力使用量の削減を合わせて実施できるようになる。

BEMSは経理や販売など通常の業務に使うコンピュータシステムと同様に、各部門のパソコンとシステム部門が運用するサーバの組み合わせで構成する。ただし最近は自社でサーバを持たずにITベンダーのサーバを活用する「クラウド型」が増えており、BEMSでもクラウド型のシステム構成が一般的になってきた(図1)。

ALT図1 BEMSの一般的な構成例。ITベンダーなどが「BEMSアグリゲータ」としてクラウド型のサービスを提供

BEMSの基本は「電力見える化」と「電力制御」

BEMSを使って電気料金を削減する方法を理解するために、具体的にBEMSの中身を見てみよう。BEMSの構成要素は企業の規模や業種などによって変わってくるが、標準的に必要とされる機能と設備は図2のように集約できる。これは2012年4月から始まった経済産業省のBEMS補助金制度で規定されている機能をもとにまとめたものである。

ALT図2 BEMSに必要な機能と設備。BEMSアグリゲータによるクラウド型のサービスを前提にした場合

まずBEMSを導入する企業側で必要な機能は大きく分類すると2つある。電力の使用量を計測してグラフなどで表示する「電力見える化」と、電力の使用量に応じて電気機器のオン/オフなどをコントロールする「電力制御」である。このうち電力制御用の装置として最も多く使われているのがデマンドコントローラだ。

もう一方の電力見える化に必要な設備としては、オフィスで使われているパソコンや通信用のルーターのほかに、空調や照明など電気機器の電力使用量を計測するための電力センサーが欠かせない。そして電力センサーからのデータをもとにパソコンの画面に電力使用量のグラフなどを表示する「電力見える化」のソフトウエアを実装する(図3)。

ALT
ALT図3 「電力見える化」の例。出典:パナソニック

あとは電力使用量のデータをアグリゲータのサーバに自動的に送るように設定しておくと、過去の使用実績や同種の企業のデータと比較して、節電対策のための「課題抽出」や「診断」といったサービスを受けることができる。

小規模なオフィスで初期導入費は100万円程度

このようなBEMSの機能を活用することで、どのくらいの節電効果を期待できるのか。企業にある各種の電気設備の稼働状況は業種によって大きく変わるため、一概には言えないが、少なくとも電力使用量を10%は削減できると考えてよい。というのも、BEMSの補助金制度において、電力使用量を10%以上削減することが必須条件になっているからだ。アグリゲータはBEMSのサービスを提供するうえで「10%削減」を必ずクリアしなくてはならない。

残る検討課題は、BEMSに必要な設備の導入と導入後の運用にかかるコストである。この点でも経済産業省の補助金制度に伴って公表された情報が参考になる。補助金の対象になるアグリゲータ各社の製品に関して、初期導入費(工事費を含む)と月額利用料がモデルケースで示されている(図4)。

ALT図4 経済産業省のBEMS補助金制度の対象になるアグリゲータ21社の製品と価格

各社の価格は提供機能や導入企業の規模によって違いがあるが、ざっくりと以下のようなコストを想定するのが現実的だろう。

  • 小規模なオフィスや店舗(空調機器が3系統以内):初期100万~200万円、年間5万~10万円
  • 中規模なオフィスや店舗、小規模な工場(同10系統以内):初期200万~400万円、年間10万~20万円
  • 大規模なオフィスや店舗、中規模な工場(同50系統以内):初期400万~800万円、年間20万~40万円

もちろん上記のコストは一般的な導入事例を前提にしたものであり、実際には電気機器の設置状況などをもとにアグリゲータに見積もってもらって初めて分かる。あくまでも参考値としてとらえていただきたい。

導入3年目からコスト削減効果

一方、実際の電気料金は小規模なオフィスや店舗の場合で、年間500万円から1000万円程度かかっているケースが標準的と考えられる。かりにBEMSの初期導入費が100万円、導入前の電気料金が年間500万円とすると、BEMSで電気料金の10%(50万円)を削減できれば、最初の2年間で初期導入費を回収できる。あとはBEMSの年間利用料を5万円として、導入3年目からは電気代の削減額がBEMSの利用料を大幅に上回り、その差額分がコスト削減になる。

BEMSに関しては経済産業省をはじめ地方自治体でも補助金制度を実施しており、補助金を活用すれば初期導入費を半分程度に減らすことができるが、補助金を受けられない場合でも、企業が電力を安く使うためにBEMSは十分な効果を発揮するだろう。

さらにBEMSの機能を拡張すれば、蓄電装置や発電装置を組み合わせて、電力をよりいっそう有効に活用することが可能になる。企業内で蓄電装置や発電装置を導入すれば、夜間の安い電力を蓄電装置に貯めて昼間に使ったり、太陽電池などによる自家発電の電力を優先的に使ったりすることができる。

蓄電装置や発電装置からの電力供給量と実際の電力使用量をBEMSがコントロールすることによって、電力会社から購入する電力を最小限に抑えることができ、状況によっては電力を売ることも可能だ。これが現時点で最も進んだ節電対策である。

電力を安く使うための基礎知識(2)

節電を1台でこなす、デマンドコントローラ
http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1204/25/news040.html
企業が電力会社に支払う電気料金は、30分ごとに計測される電力使用量の最大値によって変動する。その最大値を抑えるための装置が「デマンドコントローラ」で、電気料金を引き下げるための有効な手段として注目を集めている。
[石田雅也,スマートジャパン]

 

本連載の第1回では、電気料金の基本的な仕組みを説明するとともに、電力会社が提供する料金メニューを見ながら、電気代を下げるためのポイントを解説した。単に電力の使用量を減らすだけではコスト削減策として不十分で、電力使用量の最大値(ピーク)を抑えることが極めて重要になる。ピークを制御する装置として、一般的に使われているのが「デマンドコントローラ」である。

ALT図1 デマンドコントローラの外観。小型の製品は横幅20cm程度、重さも1kg程度。出典:大崎電気工業

通常のデマンドコントローラは図1のような形状をしており、現状の電力使用量のほかに、月間のピークの実績値と目標値、さらに年間のピークの実績値と目標値などを表示することができる。

あらかじめ設定した目標値を超えそうな状況になる(一定比率を超える)と、警報ランプが点灯したり、あるいは事前に決められた優先順位に基づいて電気機器に電力を送ることを止めたりする機能を備えている。

デマンドコントローラで30分単位のピークを制御

前回に説明したように、「高圧」と呼ばれる企業向けの電力契約では、電力量計(電力メーター)によって30分単位に測定されたピークで基本料金が決まる。契約電力が小さい「高圧小口」(50kW以上500kW未満)では、直近1年間のピークが基本料金の基準になるため、30分間だけでも過大な電力を使ってしまうと、それをベースにした高い基本料金を払い続けなければならない(図2)。

ALT図2 企業向けの基本料金は直近1年間のピークで決まる(契約電力が50kW以上500kW未満の場合)。出典:東京電力

一方、より契約電力が大きい「高圧大口」や「特別高圧」など規模の大きいビルや工場向けの場合には、電力会社との契約で「最大需要電力」と呼ぶ使用量のピークを決める必要がある。そのピークを超えて電力を使うと「契約超過金」をとられることになっていて、超過した電力に対して1.5倍の電気代が徴収される。

いずれの場合も、毎日のピークを30分単位で抑制することが、毎月の電気代と年間の電気代を大幅に下げることにつながる(図3、図4)。

ALT図3 デマンドコントローラで毎月ピークの目標値を超えないようにすれば、より低い基本料金を継続することができる。出典:東京電力
ALT図4 ピークは毎日30分単位で測定されるため、常に30分単位で目標値を超えないようにする必要がある。出典:東京電力

導入コストは平均100万から150万円程度

では実際にデマンドコントローラを導入すると、どのくらいのコストがかかるのだろうか。小型のデマンドコントローラであれば、本体は20万円から30万円程度で購入することができる。ただし電力量計や各種の電気機器(照明、空調など)との接続工事が必要になるため(図5)、その工事費を見込んでおかなくてはならない。接続する電気機器の数にもよるが、工事費を含めた導入コストは安い場合で50万円程度、通常は100万円から150万円程度かかると言われている。

ALT図5 デマンドコントローラの設置形態。出典:東京電力

これだけのコスト負担に見合う電気料金を削減できるかどうかは、現状の電力使用傾向をもとに、デマンドコントローラの販売会社や電気工事会社から見積もりを出してもらって判断するのが一般的である。

デマンドコントローラを扱う会社の中には「ESCO(Energy Service COmpany」と呼ぶ形態のサービスを提供しているところもあり、実際に削減できた電気料金をもとに成功報酬型で費用を決める方式をとる。ESCOの場合は初期導入コストを低く抑えることができる半面、電気料金の削減効果が小さくなる。

最近はデマンドコントローラでオフィスや工場全体のピークを抑えるだけではなく、電気機器ごとの電力使用量を“見える化”して、より緻密な節電対策を実施する取り組みも広がりつつある。いわゆるBEMS(ビル向けエネルギー管理システム)を使った節電対策だ。次回はデマンドコントローラを組み込んだBEMSについて解説する。

電力を安く使うための基礎知識(1)

最近まで多くの企業では、電気代は事業運営に不可欠な“必要経費”との認識が強かった。しかし今後の電力事情を考えると、電気料金は継続的に値上げされていく可能性がある。電力を安く有効に活用するための基本的な問題をシリーズで解説する。
[石田雅也,スマートジャパン]

電力を安く利用するためには当然ながら、電気料金がどのように計算されるかを理解しておく必要がある。東京電力をはじめ全国に10社ある地域電力会社の電気料金の計算方法を見ると、ほぼ共通に作られている。個別のメニューには細かな違いがあるものの、基本的な計算方法は変わらない。契約電力(使える電力の最大値)で決まる「基本料金」と、毎月の使用量によって変動する「電力量料金」の2本立てで課金される仕組みである(図1)。

このほかに金額は小さいが、再生可能エネルギーを促進するための付加金が加わる。一般企業が太陽光発電などによって作り出した再生可能エネルギーを電力会社が買い取ることを法律で義務付けているため、その分の追加コストが上乗せされる。7月からは買取価格が固定されて、電力会社が買い取る量は大幅に増える見込みであることから、この付加金も高くなっていく方向だ。

ALT図1 電気料金の計算方法。月額固定の「基本料金」と毎月の使用量に応じた「電力量料金」で決まる。出典:東京電力

電気料金の仕組みを理解するうえで、もうひとつ重要なことがある。電力会社と契約する際の電力や供給電圧の大きさによって、料金体系や利用条件に違いがある点だ。大規模な工場やビルで使われる「特別高圧」から、町工場や店舗で使われる「低圧」までの4段階に分かれている(図2)。さらに工場向けの「産業用」と一般向けの「業務用」で料金体系が違う。業務用は平日の昼間に多くの電力を使う企業向けのメニューである。

ALT図2 電力会社との契約は電力や供給電圧によって4段階に分けられている。「低圧」の場合には、電力会社以外から電力を買うことはできない

一般家庭向けは電力の小さい低圧の中でも「電灯」と呼ぶ契約タイプになり、家庭内に設置されたブレーカの「アンペア数」で基本料金が決まる。ブレーカのアンペア数で基本料金が決まるのは「電灯」だけだが、企業向けの場合でも基本料金の算定基準の原則は同じだ。使用する電力の最大値、つまり「ピーク」によって決まる。

家庭向けの「電灯」の場合は契約したアンペア数を超えるとブレーカが落ちるため、ピークは一定に抑えられるが、企業向けの契約ではピークが制限されない。一時的にでも大量の電力を使うと、そのピークが基本料金の算定基準になる。

ピークを抑えるだけで電気代は下がる

この点で特に注意が必要なのは、小規模な工場やビルで使われることが多い「高圧小口」の場合だ。契約電力が50kW以上500kW未満で、全国で70万件以上の契約が結ばれており、対象になる企業や事業所は数多くある。

高圧小口の契約では、電力メーターによって30分ごとの電力使用量が記録され、その最大値(ピーク)で基本料金が決まる仕組みになっている。図3は東京電力がウェブサイトに掲載している説明用のグラフである。各月の電力使用量は1か月間の合計値ではなくて、30分単位で計測した数値のピークを表している。1か月のうちのわずか30分間だけ大量の電力を使った場合でも、そのピーク値が基本料金に適用されてしまう。

ALT図3 「高圧小口」の場合だけ適用される契約電力の算定基準。過去1年間における30分単位の最大使用量によって毎月の基本料金が決まる。出典:東京電力

例えば通常は100kW程度の電力を使っていて、一時的に150kWの電力を使うことがあると、契約電力は150kWに設定される。その後の毎月のピークが100kW程度だったとしても、12か月間は契約電力が150kWに設定されるため、150kW分の基本料金を払い続けなくてはならない。

高圧の基本料金は通常1kWあたり1500円程度に設定されている。契約電力が50kW増えたり減ったりすれば、月額で7万5000円、年間で90万円も違ってくる。東京電力の試算では、中小規模のスーパーや事務所で契約電力が150kWの場合に、年間の電気料金は約876万円になる(月間使用量を3万3000kW時と想定、2012年4月からの料金改定後)。ピークを抑えることで契約電力を100kWに下げることができれば、電気代を10%以上削減できる計算だ。

直近12か月間における30分単位のピークが契約電力になり、基本料金が決まるため、ピークを可能な限り低く抑えることが電気代を安くするうえで有効になる。ピークを抑える手段としては、「デマンドコントローラ」と呼ぶ監視・制御装置を使う方法が現在のところ一般的だ(デマンドコントローラに関しては次回以降の本連載で説明する)。

季節や時間帯による特別料金を活用

基本料金の削減に続いて、もう一方の「電力量料金」を削減する方法を考えてみよう。

電力は夏のあいだ、特に午後の早い時間帯に最も多く使われる。いま懸念されている電力不足の問題を解消するためには、夏の昼間のピークを抑えなくてはならない。そこで各電力会社は、季節や時間帯によって電気料金の単価を変動させるメニューを打ち出している。単価に実際の使用量を掛け合わせて「電力量料金」が計算されるため、単価の安い時間帯に電力を使うようにすれば、電気代を引き下げる有効な手段になる。

東京電力の「高圧季節別時間帯別電力」という契約タイプを例にとると、年間を通じて昼間(8時~22時)の料金単価が通常の契約よりも高くなる代わりに、夜間(22時~8時)の単価は大幅に低くなる(図4)。さらに夏季(7月~9月)はピークの時間帯(13時~16時)の単価が高くなる設定だ。

ALT図4 季節や時間帯によって単価が変動する電力契約の例。出典:東京電力

実際に料金単価がどのくらい変動するのかを、東北電力がウェブサイトに掲載している料金表で具体的に見てみる。一般企業向けの通常の契約でも、夏季の料金単価は高く設定している(図5a)。東北電力は約9%を上乗せしており、ほかの電力会社も同程度である(北海道電力は夏季料金を設定していない)。

これに対して「季節別時間帯別」の契約では、4段階の料金単価が設定されている(図5b)。最も安い夜間の単価は、昼間のピーク時間の単価の半分以下になる。通常の契約で適用される単価(図5a)と比べても33~38%も安い。ただし夜間以外の単価は通常契約よりも17~27%高くなる。

ALT図5a 東北電力の「高圧業務用電力」の料金単価
ALT図5b 東北電力の「高圧業務用季節別時間帯別電力」の料金単価

「ピークカット」や「ピークシフト」が必要

このように季節や時間帯によって単価が変動する電力を活用するためには、電力使用量のピークを抑える「ピークカット」や、ピークを単価の安い時間帯にずらす「ピークシフト」の対策を講じる必要がある。エアコンの運転方法を工夫するなどの節電対策のほかに、電力使用量をきめ細かく管理して電気機器を自動制御するBEMS(ビル向けエネルギー管理システム)を導入する企業が最近は増えてきた。

単価の安い夜間の電力を蓄電池に貯めておいて、使用量が増える昼間に蓄電池から電力を供給する方法も有効である。太陽光などの自家発電設備によって、昼間の時間帯の電力を補給する取り組みも全国で広がりつつある。

自家発電設備と蓄電池を導入して、そのうえでBEMSを使って最適な電力使用状況を常に作り出すことができれば、ピークカットやピークシフトによる電気料金の削減額は大きくなる。各装置の導入コストと電気料金の削減額のバランスを見て、自社に合った設備を早めに導入することが望ましい。

バッテリー利用し50%以上の電力料金節約に成功

福島第一原子力発電所事故により、今夏の電力供給に暗雲とのニュースから、蓄電システムを利用することで家庭用電力の節減は出来ないか、と考えました。電力会社から送られてきた5月の電気料金額を見て、予想外の効果にびっくりしました。なんと前月に比べ52%、前年同月に比べ56%も電力料金を安くすることができたのです。少々、手間はかかりましたが、ほかの方にも十分、勧められる試みと考え、報告させていただきます。
1.蓄電システムは前から備えていたのか

蓄電システムとしては、所有のトヨタ エスティマ ハイブリッドに、未来のエコシステムを先取りするような、動力用ニッケル水素バッテリーの走行後余剰蓄積電力と内蔵インバータを利用した、最大1,500ワット出力の100ボルトコンセントが標準で装備されており、外出時に車内での携帯電話、ビデオカメラやノートパソコンなどの充電に使用し、重宝しておりましたが、停電時に家電製品を動かすことは考えておりませんでした。

2.今回、蓄電システムを備えた理由は

東日本大震災後の計画停電で当方の居住する藤沢市でも相当な回数で計画停電が行われ、生活、仕事の両面で大変な不便が予想されました。試しに上記の車載コンセントから延長コードで100ボルトをキッチンやリビングルームまで取り込み、大型(500リットル)冷蔵庫、照明、テレビ、ガスストーブ、パソコン、ファクス電話機、無線LANルーターなどを動かしたところ、長時間連続使用できることが分かり、バッテリー+インバータの威力を見直しました。しかし、バッテリーの余剰電力を放電し切ると、再充電のために15分置きに3分間程度自動的にエンジンがアイドリング作動します。また、計画停電のたびに、延長コードを引き込み、車を“ON”状態にしなければならないなどという不便さがあったので、思い切って自家用蓄電システムの設置を計画しました。当初の目的は停電時のバックアップでしたが、おトクな夜間電力を蓄電して昼間の時間帯で使用すると大きな節電効果も期待でき、電気代も大幅に節約できそうなことが分かり、主目的を節電・節約に切り替えました。

3.エネルギー源の選択

当初は、蓄電用のバッテリーに蓄電するエネルギー源として、定番の太陽光パネルを考慮しましたが、わが家の昼間時間帯(8時から22時)14時間の需要電力約4.7キロワット時をすべて太陽光パネルで補給するには、高価な150ワットパネルを最低4枚必要とし、それだけでも当初の予算金額25万円を超オーバーしてしまうので、太陽光パネルは採用見送りとし、当面は、バッテリー充電器を使用して商用夜間電力で充電することにしました。

4.必要な部品、工事、コスト

1)部品

必要な部品の点数は多くはありません。DC-ACインバータ、ディープサイクル・バッテリー2個、バッテリー充電器、30アンペアブレーカー、自動充電開始・停止操作用15アンペアプログラマブル・タイマー、それに配線用のケーブル類です。部品の選択に当たっては、負荷容量、使用目的、使用場所などに応じて、信頼性のある販売店に相談しました。

バッテリー: 繰り返し深い充放電サイクルをしても長寿命の、ディープサイクル用大型タイプのものが2個必要。直列接続にし、24ボルトでDC-ACインバータを駆動。重量が約57キロ、サイズも長辺が約51センチもあるので移動・設置が大変。使用時や充電時には換気にも注意が必要。通常の自動車用のバッテリーは繰り返し深い充放電のサイクルでの使用には不向きなので使用は避けた方が良い。
DC-ACインバータ: バッテリーからの直流を交流に変換してくれる機械。入力には商用AC100ボルトとバッテリーの両方に接続して、通常は商用AC100ボルト電源をバイパス出力し、停電時には自動的にバッテリーからのDC24ボルトを変換したAC100ボルトに切り替えて出力してくれる便利なタイプを選びました。インバータからのAC100ボルト出力は50ヘルツまたは60ヘルツの切り替え可能。多少余裕を持って最高出力2,500ワット(25アンペア)仕様を選択。
バッテリー充電器: バッテリーの定格容量・電圧あったものを選びます。バッテリーの寿命を縮めたり、加熱・漏液を起こす恐れのある過充電を防ぐ機能の備わった、信頼性の高いものを選択。
プログラマブル・タイマー: 常時バッテリーに接続されたバッテリー充電器を、毎日自動的に商用AC 100ボルトに夜10時に“オン”し、翌朝8時に“オフ”するようにプログラムできる最大15アンペアタイプのタイマーを選択。
コード(ケーブル)類: インバータ取扱説明書指示に従い、DC-ACインバータと2個のバッテリー間の配線などに使用するため、十分な電流容量のものを選び、端子の接続にはカシメが必要なので、購入店にて加工を依頼しました。交流周りは、黒色被覆線はライン、白色被覆線はニュートラルとなるように留意して配線しました。

2)工事

暫定的な設置場所として、子供たちが巣立っていった12畳の広さの子供部屋にし、そこに上記の部材を設置しました。バッテリーは重量が約57キロもあるので、移動・設置は大変でした。DC-ACインバータと2個のバッテリーの間の配線に必要なコード類にはすべて圧着端子が取り付け済みだったので、容易に配線することができました。すべてのケーブルには赤と黒などでプラス端子用・マイナス端子用を明確にし、極性を絶対に間違えないよう細心の注意が必要です。バッテリー充電器には、赤と黒の2本のクリップ付きのケーブルが備わっていて、バッテリー端子にはクリップで接続します。AC 100ボルト出力ケーブルには建物壁内配線用のFケーブルを使用して建物壁取り付け用コンセントに接続し、そこからリールに巻かれた15メートルコード(いわゆる電工ドラム)、延長コードなどで、使用する電気器具にAC100ボルトを供給しておりますが、これらの工事は約2時間程度で済みました。しかし、延長コード類は床をはわせてあり、これにより閉まらなくなったドアもあるような状態なので、近い将来に本システムの最終的な配置場所が決まり次第、専門業者にお願いしてコードを壁内や目立たないところをはわせて、分電盤に接続をお願いする予定です。また、インバータやバッテリー充電器は冷却用ファンからのノイズが気になりますので、最終的には装置全体を金属製のストレッジやラックに納め、屋外に設置するつもりでおります。

3)コスト

必要な部品、部材は、15Aプログラマブル・タイマーだけは近くの電器店で、その他はインターネットで検索して見つけた地元神奈川県足柄上郡の太陽光発電機器専門店から一括購入し、市販の同様蓄電装置の約半値の38万円で調達することができました。

4)節電効果の実証

ちょうど本格運転開始し、また、電気料金メニューを、スタンダードな従量電灯Bから、夜間10時間型の“おトクなナイト10”に切り替えてから、1カ月経過した時点で東電の検針があり、“電気ご使用料のお知らせ”が来ました。メニュー変更に伴い、東電からの電気料金請求は、電力使用量および料金ともに、昼間と夜間とに分けられた内訳が記載されており、5月1カ月間の使用量の総計は370キロワット、そのうち昼間67キロワット、夜間303キロワット、また、料金の総計は5,172円で、そのうち基本料金1,219円、昼間料金1,599円、夜間料金2,872円、燃料調達費-529円という内容でした。電気料金総計5,172円という金額は、前年5月分の電気料金が11,686円、本年4月の電気料金が10,743円でしたから、それぞれ約、56%および52%の節約となり、驚異的な節約率です。

また、電力使用量では、前年同月、先月はそれぞれ、総計507キロワット、461キロワットで、ともに、昼間と夜間の内訳が記載されておりませんので、それぞれの時間帯での使用量は分かりませんが、節約率は前年同月、先月と比較してそれぞれ、約27%、25%と大幅な節約をすることが出来ました。肝心な電力使用量ピークの存在する昼間における電力使用節約率に関しては、以前の従量電灯Bでは内訳が記載されなかったので内訳比較をすることはできませんが、5月の昼間の使用量67キロワットという量は、“最初の80キロワットまで”という昼間時間帯の第1段階料金域上限を大幅に下回っていることを考慮すると、大幅な節約量であったと思われます。

本蓄電システム導入以降の、昼間の電気料金の削減は本装置の導入により、また、電力使用総量の大幅な減少は、装置の導入によって無駄な電力使用をできるだけ控えようという電力節約志向がより強まったという意識の貢献が大きかったと言えます。今後は、夏場の暑さのピーク時を迎えますが、本システムでエアコンをも稼働することになりますが、高めの温度設定や扇風機を効果的に使用するようにして、昼間の電力使用のピークを乗り切りたいと思います。
5.最後に

必ずしも数百万円かけて多くの太陽光発電パネルを使用した発電装置を設置しなくても、ここに紹介致しました数十万円程度の自家製または市販による蓄電システムを多くの個人家庭で設置して、割安な夜間電力を昼間での電力使用に回すことにより、個々の家をSmarter Homeに作り替えることができることが証明できました。それによる個々の電力使用節約量は微々たるものですが、このような地道な貢献なくしては、復興までの長い先々、昼間の電力需要ピークによる突然の、あるいは、計画的な大規模停電を防ぐことは不可能であると信じます。また、このような社会貢献に加えて、設置に必要な初期投資は、毎月の大幅な電気料金の節約によって回収されて行くので、決して無駄になることはないと信じます。

本投稿記事は、蓄電システムの一例であり、使用機器、使用機器設定条件、使用環境、使用条件、電力会社との電気契約条件、などによって節電効果、節約効果は異なります。また、ご使用になる機器類は、それらの取扱説明書に記述された規定範囲内でご使用ください。

(掲載日:2011年6月7日)
神谷 明 氏(藤沢市在住)

ラックに載せた蓄電システム インバータ周囲の入出力配線状況
ラックに載せた蓄電システム インバータ周囲の入出力配線状況