No.13 Conference

第13回 JTAコーチャーズカンファレンス(2003)

今回のカンファレンスの感想

今回のセミナーのわたしにとってのハイライトは、 スポーツビジョン、サービスの強化法、親子3代テニス(キッズテニス)の三つであった。
総評としては、ちょっと物足りなさを感じるも、得るものもあったのでよしとしよう。
以下が、そのとき感じたことである。

スポーツビジョン

まず、スポーツビジョンについて

スポーツビジョンという言葉は、お恥ずかしい話だが、今回はじめて聞いた。 これは、アメリカで開発された考え方で、 スポーツマンのための視力測定標準のようなものだと思う。 アメリカでは、静止視力や動体視力など十数の測定項目を設定しているそうだ。
しかし、今回紹介されたのは、それを日本でさらに消化し、 測定項目を8項目に絞ったものだった。

ここで、驚いたのは、一概に動体視力といってもいくつもの種類があるということ。 大型自動車の免許更新には、動体視力の検査もあるようだが、 検査するのは垂直型の深度視力検査一種類のみだそうだ。 それ以外に、水平方向の視力や瞬間視、目と手の連携チェックなど、なるほどというものがあった。

これまでの調査でいえるのは、一流のプレーヤーほど、この測定値が高いということである。 特に、サッカー、野球、テニスなど、状況判断が必要で、かつそれを視力に頼るスポーツには、 この傾向が顕著に出ているということである。 ただし、水泳やレスリングなど高度な視力を必要としない競技もたくさんあって、 一概に目の悪い人は、一流のスポーツ選手にはなれないということではないらしい。
また、動体視力の中でも瞬間視の能力は、後天的な訓練によって能力を高めることができ、 60歳前後まで高いレベルを保つことができるらしい。

わたしは極度の近眼(左右0.08)で、テニスをするときはコンタクトレンズをして、 静止視力を矯正している。 コンタクトは、大学を卒業したころから使っているが、めがねに比べて視野が広く、 見える範囲が広いように感じている。 めがねをやめてからのほうが、ずっと気持ちよくボールに反応できるし、動けているような気がしている。
そういえば、真下先生も、スポーツビジョンを強化するには、静止視力を矯正するのが一番の近道である、 ということをおっしゃっていた。

サービスの強化法

つぎに、サービスの強化法について

この強化法は、亜細亜大学の堀内先生が考え出したものだ。 この間大学の学生に試してみているが、すごく結果がいいので、ここで紹介したというもの。
先生の研究の動機は、日本人テニスプレーヤーのサービス力が、諸外国に比べてあまりにも弱いので、 何とかせねばというのが発端であるとおっしゃっていた。 わたしも同感である。
この強化法は、人間の肩からひじ、手首にかけての骨格と筋肉の自然な動きをもとにして、 強力なサービスを打つための動きを研究した結果、たどりついたもののようだ。

先生は、これまで教えていた方法とまるっきり違うので、とまどわないでくださいといっていた。 一般的には、そうかもしれない。
しかしわたしは、これに似た方法をもう20年も前から個人的に取り入れている。 確かにこの方法を他人に教えても、賛同してくれた人はひとりもいなかった。 今回、堀内先生がはじめてである。
ただし、私の場合はなんとなくこの方がいいのでは、という漠然としたものであったが、 今回それがある程度理論的に説明されたわけである。 そういう意味で、わたしにとってすごい収穫であった。

親子3代テニス(キッズテニス)

最後に、親子3代テニス(キッズテニス)について

わたしが子供を教えていたのは、もう20年も前のことになる。 そのころに比べると、テニスに対する考え方やドリルの技術など、ほとんどすべてにおいて 進化してきた。驚くばかりである。

特に、各スクールのコーチたちによって紹介されたドリルには、 スポンジボールやバトミントンのシャトルなどテニス以外の道具を使ったものもあり、 いろいろと工夫され、バリエーションも多く、しかも理にかなったものが多かった。 成人や中高年に転用できるアイデアもたくさんあって、非常に参考になった。

また、スクールの基本姿勢にも変化が見られた。
注目したいのは、試合で勝てる競技者のみを育てるというのではなく、 テニスのできる個人を育てるといった思想が感じられることだ。 あいさつや時間厳守など、一般的にも必要な人間としてのしつけを、 スクールの中にもうまく取り込んでいる。
日本には昔から剣道の道場というのがあり、技を磨く前に礼儀作法を徹底的に教えていた。 剣道のためというよりも、わが子のしつけのために剣道を習わせている親御さんも多い。 人間を磨くためにテニスを習わせるのだ、というところまでもっていけると、 テニスの裾野もずいぶんと広がるのではないかと思った。

セミナーの内容としては、2日目同じテーマが4コマあったので、最後のほうは正直飽きてしまった。 飽きるのは、子供ばかりではない。 あまりにも単調なものが続くと、大人でも飽きるのだ。
4つの有名なスクールの実例を紹介してもらったのだが、 テーマが非常に限られているし発展途上の分野なので、 紹介される内容にかなりの重複がみられた。
希望としては、せっかく「親子3代テニス」をうたっているので、おじいちゃんとおばあちゃんの テニスというのも紹介してほしかった。
だけど、この「親子3代テニス」というフレーズは、テニス以外でもけっこう使えると思う。 これも収穫である。

Contents
3月8日(土) 10:00~12:00
スポーツビジョン(スポーツに必要とされる見る能力)について
~テニスにとって目は重要なポイント、正しい知識を学ぼう!
「真下一策/スポーツビジョン研究会代表 (財)日本体育協会スポーツドクター」
「村松秀樹/JTA医事委員会部会員 医療法人柏堤会戸塚共立第一病院小児科部長」
13:00~15:00
トレーニング~低年齢から14才までを対象3Rを常に意識した実例を紹介!
「梅林薫/JTAスポーツ科学委員会委員長 大阪体育大学体育学部生涯スポーツ学科教授」
「中村寛孝/JTAスポーツ科学委員会委員」
15:10~17:10
サービスの強化法~言葉で教えるよりも、身近な小道具を使うとこんなにわかりやすい!
「堀内昌一/JTA強化委員会委員 亜細亜大学助教授」

3月9日(日) 9:00~10:30
親子3代テニスを普及させるために
~コーチ・両親が理解しなければならないこと~
「ヒューバート・カラッシュ/(財)吉田記念テニス研修センターヘッドコーチ」
「山口憲一郎/財)吉田記念テニス研修センタージュニア普及担当チーフコーチ」
10:40~12:10
スポンジボールを日本で最初に導入!
全国各地に普及にまわって19年NPO法人を取得
「正木茂/JTA普及指導委員会委員長 ショートテニス振興会理事長」
13:00~14:30
キッズを教えるには親とのかかわりが大切!
最近ビデオも出したという大御所に登場して頂きます
「飯田藍/JTA競技者指導育成推進委員会副委員長 桜田倶楽部 東京テニスカレッジ校長」
14:40~16:10
発掘から育成、そして強化へと!
ジュニア指導の名門がキッズ指導のポイントを伝授
「阿部宏和/㈱湘南スポーツセンター クリニック(スクール)部門責任者」

主  催: 財団法人 日本テニス協会
主  管: 普及指導委員会
協  力: 強化委員会・スポーツ科学委員会・ジュニア委員会
特別協賛: 株式会社 ポッカコーポレーション
期  日: 平成15年3月8日(土)~9日(日)
会  場: 国立スポーツ科学センター(JISS)