Shoulder

テニス肩(四十肩)について

発生(それは知らないうちに忍び寄ってきている)

痛みは、ちょっとしたものから始まり、突然激痛となって、わたしを襲った。
肩の不調は27歳くらいからあったが、痛くてテニスが出来ないという状態ではなかった。 痛くてテニスも出来なくなったのは、あまり記憶が確かではないが、 1990年から91年にかけてだったと思う。
わたしは、1983年に上京している。 それまでは、田舎の宮崎にいたので、暇さえあればテニスをしていた。 たぶん、ほとんど毎日テニスをしていたのではないかと思っている。
しかし、上京し就職をきっかけに、頻繁にテニスを出来る状況ではなくなってしまった。 しばらくは、ほとんどテニスをしない時期が続いた。
そのころ、体がだんだんとたるんできて、このままでは、体が腐ってしまうのでは、という 感覚を持ったことを記憶している。 そんなことで、約10年くらい、それまでに比べてあまりテニスをしない生活であった。

兆候(気付くきっかけはひょんなこと)

1985年くらいの頃だと思う。 仕事中に椅子に座った状態で、床に落ちた書類を拾おうとして、前屈して右手を伸ばした瞬間、 右肩が抜けるような鋭い痛みが走った。 そのときは、何だろう、痛いなというくらいのものであった。
しかし、その後徐々にであるが確実に痛みは大きくなっていった。 テニスのサービスが出来ないだけでなく、フォアハンドも打てなくなったり、 しまいには自動車の運転で、右手で左にハンドルを切ることも出来なくなってしまった。

症状(「ズキーン」と痛い)

普通にしている分には何もないのであるが、右手を上に上げて、ちょうど万歳をするくらいまで 上がったとき、「ズキーン」といった鋭い痛みが右肩に走る。 肩の外側から左手で触っても、その痛みは再現できず、多分肩内部の炎症であろうと思った。
これはマッサージに行くようになってわかったことだが、上半身裸になって鏡に映すと、 若干であるが右肩幅のほうが左より狭くなって見えた。 つまり、少々縮んでいたのである。 それは、素人が外見から見てもわかるくらい、顕著な特徴だと思う。

治療(治療、それは格闘である)

1)整形外科(町医者編)

最初は、なんだかわからなかったので、まず整形外科へ行ってみようと思った。
まずは、近所にS整形外科というのがあったので、そこへ行ってみた。 ここで、わが家で有名な「お父さん失神事件」というのが発生した。
この病院は、ちょっとばかり高齢の先生が一人でやっている医院で、 お客さんはお年寄りが圧倒的に多い。 比較的若いなと思われるのは、わたしくらいのものであった。 診察としては、どのように右肩が不調であるかということを説明しただけで、 触診もなかったと思う。
先生が、「じゃ、あの注射を打っておこう。」「(看護婦さん)準備して。」といって、 さっさと処置の体制に入ってしまった。 おいおい、わたしは何も確認してないし、かってに注射を打たないでよ。 何がどうなっているのかを知りたかっただけなのに、と思っているうちに、 チクッと大きな注射を打たれてしまった。
すると、頭や顔から血の気がスーッと引いていくのがわかり、 目の前が真っ白になり、そのまま診察室の別途に横になってしまった。 失いかけた意識の中で、「おい、気付けの注射を準備しろ。」と、 看護婦さんに指示している先生の声がかすかに聞こえていた。
30分くらい気絶していたのだろうか。 こんなところに長居をしていたら殺されてしまう、と思って、 会計をそそくさと済ませ、早々に帰った。
これが、わが家の「お父さん失神事件」の顛末である。
その後、知り合いから、いい整形外科を紹介してくれ、といわれたときは 、迷わずS整形外科を紹介しているが、誰一人としてその医院へいった人は いないと聞いている。
あとでわかったことだが、ステロイド系の薬を肩の骨の間、ちょうど 炎症を起こしているあたりに打ったようである。 これは一種の麻酔効果があり、医者が使う対処療法に一つである。
したがって、これで肩が治るわけではない。 一時的に痛くなくなるだけである。 痛くなるとまた病院に行って、注射を打ってもらう仕組みなのである。 ま、それはそのお医者さんの飯の種なので、置いておくとしても、 問題はステロイド剤である。
ステロイド剤は、いろいろな痛みの治療に医者が多用する薬の一つである。 問題は、このステロイド剤の副作用である。 痛みが緩和されるという効能はあるものの、その他の関係ない副作用が多く、 それもしつこい。
わたしの肩も、この事件以来完治するまでにかなりの時間を要したが、 その元凶は、このステロイド剤の副作用が大いに影響していると思っている。

2)整形外科(大学病院編)

その後、どうしてもこの肩の痛みの原因が知りたくて、今度は慶応大学病院へ行って見た。 紹介状もないので、一般外来で受付した。
たくさんの人が並んでおり、実際に診察室にたどり着くまで、ものすごい時間を要した。 ただ、診てもらったのは5分程度であるが。 これは、余談か。
レントゲン写真を見ながら、先生曰く、「君の肩は骨と骨がくっついていて、間隔が狭くなっている。 そのため、骨同士がぶつかり合うことがあり、そこが痛くなっている。」 ふむふむ、なるほど。 「それで、手術してこの骨を削らないと治らないよ。」 え、削るの? 続けて、「有名な野球選手もたくさん来るが、みんなそうしているよ。君はどうする?」 「え、もう少し様子を見てみます。」
そういって、早々にこの病院からも立ち去った。 骨を削らないと治らない、何を言っているんだろうこの人は。 究極の対処療法であるが、いかがなものなのか。 もし、手術後肩が元通り直ったら、骨の間隔が空き過ぎてがたがたになるのではないか? くわばらくわばら。

3)マッサージ編

そんなこんなで失神したり、骨研磨におびえた日々を過ごしているとき、妻が一枚の新聞広告をわたしてくれた。 「ここ、どうなの?」
それは近所にできたマッサージ屋さんの広告であった。 名前は、バイオセラピーと書いてあったが、内容は接骨院である。 ここに「わらをもすがる」つもりで尋ねてみた。
先生は、最近専門の学校を修了された若い男性で、まじめな方であった。 症状を話して、早速診断と治療をしてもらった。
この先生の説明では、肩の筋肉、特に肩甲骨を支えている筋肉が非常に難くなっており、 それが原因で肩関節が縮んでいるという診断であった。 また、手を上げると痛いと言う症状は、手を上げたとき、肩間接同士が衝突し、鋭い 痛みが出ているのではないか、ということであった。
治療法としては、この肩甲骨の筋肉をほぐして、元のやわらかい状態に戻せば、 痛みは取れるしテニスも再開できるでしょうということであった。 診断と治療法には、なんら異論なく素直に受け入れることができた。 実際の治療法としては、2週間に1回の割合でマッサージを受け、これを3ヶ月ほど 繰り返すというものであった。
この先生の特徴は、痛い肩にはあまり触らず、緊張した肩筋肉を緩めるためのマッサージを 考えてくれたということだろうか。 たとえば、右肩が緊張している場合は、左股関節も緊張するので、 まず左股関節を緩めるマッサージをする、といった方法である。
3ヶ月もすると、縮んでいた右肩もほぼ元に戻り、自分で見ても左右対称に 近い状態まで戻ってきた。
また、両手を万歳し、思い切り両手を伸ばして背伸びをしても、 もう右肩には痛みは発生しなくなっていた。
1年くらいたって、同じ悩みの知人にそのマッサージ屋を紹介したが、 そのときはもう引越しをされたのか、そこに店はなかった。 それ以降、その先生のお店はわからないままである。

4)サプリメント編

肩痛の症状を父に話すと、それは40肩の症状で、肩の内部にかなり炎症が起きている のでは、との診断だった。 早速、末梢神経の改善のために、ビタミンB群をいくつか取るようにとの指示があった。
しかし、その時何を飲みなさいといわれたのかどうか、記憶にない。 たぶん、ビタミンB1とB12ではなかったか、思うのであるが。 何かメモをしておけば良かった。
その当時は、健康のことは父任せで、自分で何も考えていないころであった。 亡くなってから、そのありがたみをひしひしと感じる出来事のひとつである。

5)体操

肩が治るまでに、わたしの場合約1年くらいかかっている。 その間、自分としては何でだろう?と悩む時間がたくさんあった。 それで、40肩50肩に関する本も少し読んでみた。 そこに、40肩を改善する体操というのがあって、丁寧な解説があった。 これも、今となってはどの本であったかは定かでない。
ただし、これらの体操のうち今でも続けているものがひとつだけある。 それは、まず立った状態から状態を屈折し、 応接テーブルくらいの高さのものに左手をつく形を作る。 右手には1Kgか2Kgくらいのおもり、わたしのばあいは2Kgのダンベルを使っているが、 それをもって、右手をその重さに任せてぶらぶらとさせる。 ようはこれだけである。
この体操は、今でも続けている。 ダンベルの重さで、肩関節、つまり肩と腕の付け根のところが、若干開く感じがして、 とても気持ちいい。 腕を前後や左右に動かしたり、右回り左回りさせるなど、自分で変化をつけてもいい。
サプリメントを摂り、マッサージを受けながら、毎晩この体操をしていた。 そういうわけで、実際のところ何がいちばん効いたか、ということでは、 正直わからないというのが答えである。
しかし、どれも確実に手ごたえがあり、有効なものであると思っている。 どれかひとつ、というのではなく、総合的に取り組むのがいいのかもしれない。

現状(ぼちぼち)

1)右手首ガングリオンと肩関節の関係

ガングリオンと肩との間に、微妙な関係があるような気がしてきた。
というのは、右肩の調子が悪いなと感じるとき、 つまり肩を回したり、テニスのサービスをしたときに違和感を感じるとき、 決まって右手首のガングリオンが大きくなっている。 そこで、これは大変と、上記の体操を2、3日続けると、 右肩の違和感も取れ、同時に、これも不思議だが、 ガングリオンも小さくなってくるのである。
腱とか軟骨、間接内のクッション組織など、 かなり繊細な関係があり、体の中で微妙な均衡関係を保っているのかもしれない。 今のところ、この関係を解明してやろうという気持ちはなく、 とりあえず肩が動き、ガングリオンを許容範囲に収まっていて、 適当にテニスができればいいと思っている。

2)50肩の危機

現在のところ、わたしの肩はテニスができるくらいの可動能力を有しているが、 ちょっと気を許すと、違和感を感じることがある。 違和感とは、昔40肩を患ったときの前兆症状である。 これを感じたら、すぐに体操とテニスの前後のストレッチを欠かさず行うようにしている。 ストレッチは毎回やらないの? そう、ついついサボってしまう。
本当は、毎回気をつけて運動前後のストレッチを欠かさないようにすれば、 いつ肩が痛くなるかといった恐怖感におびえなくてもいいのにと思っている。